【2017年一部更新】
本日はフィンテックの「送金分野」について書きます。
これまでの記事はこちら。
- FinTechの分野って何があるの?その①(融資・個人の資産管理編)
- Fintechの分野って何があるの?その②(決済編)
- FinTechの分野って何があるの?その③(個人投資・会計編)
- Fintechの分野って何があるの?その④(機関投資家による投資・資金調達編)
- フィンテックの送金(Remittances)分野
- シナリオA:スタートアップの送金サービスが流行る
- シナリオB:ビットコインを用いた送金サービスが流行る
- 自分でビットコインで海外送金するだけでも安いです
- シナリオC:モバイルペイメントサービスが流行る
- シナリオD:ブロックチェーン技術を用いた送金サービスが流行る
フィンテックの送金(Remittances)分野
すでに銀行の送金ビジネスに関しては、様々な側面からディスラプトされる可能性が示唆されています。
個人的には、銀行の手数料が安くなったり色々銀行業務が改善されていくのは「世界の大手銀行が参画するブロックチェーンプロジェクトが進展した後」だと思っています。
リップルネットワークが日本の銀行に採用されるのか、それともビットコインを用いた破壊的なサービスが銀行の送金業務を奪うのか、シナリオ通りにブロックチェーンプロジェクトが進展するのか、きっと5年以内に決着はついているでしょう。
そこで本日は、色々な送金サービスの可能性について考察してみました。
シナリオA:スタートアップの送金サービスが流行る
海外には非常に多くの送金サービスがありますので、今回は一例としてイギリスの「Transfer Wise」を取り上げます。
こちらのサービスは簡単に言うと、「送金ニーズのマッチングサービス」です。例えば、以下の2人がいたとします。
- 日本からアメリカに10万円を海外送金したいAさん
- アメリカから日本に10万円を海外送金したいBさん
「Transfer Wise」はAさんとBさんのニーズを汲み取り、以下の対応をします。
- 日本国内で、Aさんの口座からBさんの口座へ10万円を振込
- アメリカ国内で、Bさんの口座からAさんの口座へ10万円を振込
こうすると、送金手数料は激的に安くなります。
一般的な金融機関の海外送金手数料が大体5000円程度ですので、日本国内での振込手数料を考えれば、非常に安くなりそうなことは想像に難くないかと思います。ちなみに大体「Transfer Wise」を使うと手数料が10分の1の500円ぐらいになるようです。
でも残念ながらこのサービスはまだ日本語には対応していません。日本に参入する障壁が高いという理由が背景にはあるのかもしれません。
また、「Transfer Wise」はアンチ銀行の姿勢を見せているスタートアップでもあるので、中々日本に入って来るのは難しそうな印象です。
日本で金融業をやろうとした場合、どうしても金融庁などの国家とも上手くやっていく必要が出てきます。
協業姿勢を見せて物事を上手に進めている「Money Forward」さんや「freee」さんなどは、その点を非常に良く理解されており、サービスをスケールさせているので本当に凄いです。
【2017年2月追記】
結局Transfer Wiseは日本に進出し、現在はメンバー募集中のようです。
シナリオB:ビットコインを用いた送金サービスが流行る
innovation-technology.hatenablog.com
今回はシンガポールのCoinPipを取り上げます。
CoinPipは、こちらの記事にもあるように、ビットコインを使って海外送金を簡単に行えるサービスです。
このサービスの面白いところは、ユーザ自身がビットコインを保有する必要がないところです。
例えば、日本にいるAさんが、米国に住むBさんに、10万円を送金したいとします。このサービスは、Aさんの10万円を「10万円分のビットコイン」に交換してくれます。そしてその「10万円分のビットコイン」をドルに換金して、米国に住むBさんに渡すという仕組みです。
つまり、ユーザは実際にビットコインに触れる必要はなく、CoinPipが勝手にビットコインに交換してくれるのです。
ビットコインの送金にかかるコストや、ビットコインと法定通貨(円やドルなど)を交換するコストは安いので、結果的に一般的な金融機関が提供する海外送金の手数料よりも、遥かに安い手数料でユーザーにサービスを提供することができます。
日本では特に同じような有名なサービスがまだ無いかと思いますので、今から始めてもそれなりになりそうな気がしないでもないです。
自分でビットコインで海外送金するだけでも安いです
こちらの記事をさらに掻い摘んで説明します。
例えば、日本にいるAさんが、米国にいるBさんに、10万円を銀行で送金する場合、5000円の送金手数料がかかるとします。
そこで、Aさんは10万円をビットコイン10万円分にウェブサイトで交換します。
ちなみにここでの交換手数料は、日本ではビットフライヤーなどのサービスを使えば今なら無料だったりします。
その後、Aさんはビットコイン10万円分をアメリカにいるBさんに送金します。ここでの送金手数料はほぼ無料です。
そして、アメリカにいるBさんはビットコイン10万円分を受け取り、ドルに換金します。ここでの交換手数料はサイトによりますが、せいぜい数百円程度かと思います。
つまり、相手もビットコインユーザーであれば、それだけで送金手数料は劇的に下がるということです。
シナリオC:モバイルペイメントサービスが流行る
モバイルペイメントサービスはありすぎて紹介しきれないので、また今度まとめます。今日はSNS分野のWeChatだけ先に紹介します。
WeChatは日本のLINEのようなサービスですが、このSNSでも簡単に振り込みや送金が可能です。
もはや金融サービスで日本が中国に追い抜かれてしまっていることは自明な気がしますが、中国では既にSNSによって送金手数料の価格破壊が起きています。このWeChatを使えば、なんと2万元(約40万円)まで手数料無料のようです。
実際に中国に駐在している友人に話を聞くと、多くの中国人はこちらのSNSと銀行口座をリンクさせて利用しているみたいです。例えばご飯を食べた後のお会計などはWeChatで済ませるようです。
日本ではちょっと前に「LINE Pay」というサービスがリリースされましたが、正直セキュリティ面が不安です。アカウントののっとりも多発しているLINEへの不安感を払拭するには、中々時間がかかる(というか略不可能?)かもしれません。
シナリオD:ブロックチェーン技術を用いた送金サービスが流行る
個人的には、こちらのサービスにはそんなに期待できないんですが、いずれにせよ今後2~3年においては、新たな送金サービスによって急激に銀行手数料が安くなることは残念ながらないかなと思っています。
随分前からWestern Unionなどの送金サービスは日本にありますが、そんなに利用者は急増していない印象ですし、どちらかというとセブン銀行の海外送金の方が有名な気がします。
いっそのこと送金手数料「無料」のサービスぐらいが出てきたらバズるのかもしれません。送金についてはもう少し書きたいので続きは次回以降。