金融とテクノロジー雑記

勉強になった本の感想など

第二種金融商品取引業や貸金業の登録要件から見る金融業参入へのハードルの高さ

金融の規制

【2017年一部更新】

先日銀行法改正による出資規制緩和のニュースが出ていました。

このようなニュースを読むと、日本の金融業界のベンチャー企業は、本当にメガバンクや金融庁と上手くやっていかないと事業を発展させるのが難しいなぁと改めて感じました。

そしてそもそも、日本でオンライン融資サービス(ソーシャルレンディング事業)などのフィンテックサービスを提供するためには、金融庁への各種登録が必要になります。

そこで今回は、具体的にどのような資格が必要なのか?などをご紹介します。

ソーシャルレンディング事業開始のために必要な資格

資格

現在、日本のソーシャルレンディング事業者は、クラウドクレジットさんを除いて、事業開始のために「金融商品取引業第2種 or 第1種」「貸金業」の資格を取得しています。

クラウドクレジットさんは延滞債権の買取という、異なるビジネススキームを使われているので、「貸金業」の登録が必要ないようです。

ちなみにこちらのクラウドクレジットさんのビジネスモデルについては、また今度時間があるときにでも書こうかと思います。

話を戻しまして、このソーシャルレンディング事業を提供するにあたって必要な「第二 種金融商品取引業」と「貸金業」に関して、具体的にどのような規制が設けられているのかを、主に「資金面」と「人材面」からざっくり紹介します。

なお、より正確な情報を知りたい方は行政書士さんなどに相談される事をお勧めします。

第二種金融商品取引業の登録要件

金融商品取引業第2種

資金面の規制

資金については、少なく見積もっても1200万円以上は必要かと想定されます。

  • 最低資本金:1,000万円以上
  • 登録免許税:15万円(コンサル等を利用して手続きを進める場合は、30万~120万円程度余分にかかるようです。また、会社の事業目的に「投資助言業」が無い場合は、変更登録が必要で3万円追加でかかるようです)
  • 証券・金融商品あっせん相談センターへの登録:年会費10万円
  • 第二種金融商品取引業協会への入会:入会金100万円、年会費50万円

人材面の規制

人材面については、下記のような経歴やスキルを持ち合わせた人材を会社に揃えた上で、「業務遂行に必要な人員が各部門に配置され、内部管理等の責任者が適正に配置される組織体制、人員構成にあること」が必要なようです。

  • 経営者:経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有すること 
  • 常務:金融商品取引法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること
  • 法令順守部の責任者:金融機関のバックオフィス経験者、行政書士や司法書士などの資格を持っている方が適任
  • コンプライアンス担当者:営業部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として知識及び経験を有する者が確保されていること

貸金業の登録要件

貸金業

資金面の規制

  • 最低純資産額:5,000万円以上

人材面の規制

  • 常務:貸付けの業務に3年以上従事した経験を有する者
  • 貸金業務取扱主任者:試験に合格し主任者登録を行った者(登録を受ける際は講習を受講)で、営業所等毎に設置。職務は、営業所等において使用人、従業員に対し法令等を遵守して貸金業の業務を適正に実施できるよう助言・指導すること

組織体制面の規制

その他にも、固定電話を設置できる独立した営業所・事務所が必要であったり、都道府県知事か財務局長への登録が必要で、「社内規則・組織図」の提出をしたり、営業所等において、貸金業取扱主任者を貸金業の業務に従事する者50名につき1名以上の割合で設置する必要があったり等々、とにかく色々と細かい規制も満載です。

(参考サイト)

色々とざっくりと書いてきましたが、日本における金融業への参入障壁の高さが分かる内容かとは思います。

オンライン融資(ソーシャルレンディング)事業への参入について

オンライン融資

以上のような参入障壁から、ゼロから事業を立ち上げるのは正直大変です。

従って、証券会社を買収したクラウドバンクさんのように、このオンライン融資の分野に参入してくる事業者は、恐らく元々「金融商品取引業」の資格を保有している証券会社の方が、今後は多くなるのかもしれません。

また、ユーザー側としては、正直その方が安心感があるので、大手の会社が参入した方が、今後はかなり有利なようにも思われます。

欧米に遅れること数年ではありますが、日本でも新しい融資形態が盛んになっていくのと、このようなソーシャルレンディングサービスを提供する事業者が増えていくのは時間の問題でしょう。